伊吹吾郎の役者人生は、常に時代の変革期とともにありました。北海道爾志郡熊石町(現・八雲町)で生まれ、国士舘大学工学部を中退後、名門・劇団俳優座養成所(第19期生)で演技の基礎を徹底的に叩き込まれました。
1968年のドラマ『無宿侍』で鮮烈なデビューを果たすと、若い頃は筋骨隆々の精悍な肉体と野性味あふれる風貌で脚光を浴びます。東映の実録ヤクザ映画『仁義なき戦い 頂上作戦』や『北陸代理戦争』などでは、荒々しくも筋の通った武闘派を演じ、映画ファンに強烈な爪痕を残しました。
そして1983年、伊吹吾郎の代名詞となる『水戸黄門』(第14部)の3代目・渥美格之進(格さん)役に抜擢されます。ここから2000年の第28部終了まで、足掛け17年間、通算683回にわたって全国のお茶の間へ「静の格さん」として重厚な正義を届け続けました。
特筆すべきは、2009年に放送されたスーパー戦隊シリーズ『侍戦隊シンケンジャー』への出演です。主人公・志葉丈瑠(演:松坂桃李)を厳しくも温かく導く後見人・日下部彦馬(ジイ)役を演じ、モヂカラを操りながら若い侍たちを支える姿は、子供たちだけでなく特撮ファンの大人たちをも熱狂させました。当時60代前半だった伊吹吾郎は、若手俳優たちと同じ目線で過酷な現場を走り抜け、新たなファン層を爆発的に広げたのです。