ジャック&ベティの足跡を辿ると、日本の戦後興行史とシネマカルチャーの変遷がそのまま重なります。
前身となったのは、1952年に開館した名門映画館「横浜名画座」です。昭和の映画黄金期を牽引した同館でしたが、時代の移り変わりとともに1991年に全面改装を実施。二つのスクリーンを持つ現在の形態へと生まれ変わり、「シネマ・ジャック&ベティ」としてリニューアルオープンを果たしました。
劇場名の由来となったのは、昭和の日本の中学校で広く使われていた伝説的な英語教科書「Jack and Betty(ジャック・アンド・ベティ / Let's Learn English)」です。誰もが親しんだ主人公の男女の名前を冠することで、「世代や国境を越えて親しまれ、世界への窓口となる映画館でありたい」という願いが込められました。
しかし、経営環境の悪化に伴い2005年に運営会社が撤退し、一時完全閉館の危機に直面します。この窮地を救ったのが、「横浜からミニシアターの灯を消してはならない」と立ち上がった市民有志や、現支配人の梶原氏でした。2007年春に新生ジャック&ベティとして再スタートを切った後も、デジタル映写機の導入危機や感染症拡大に伴う長期休館など、度重なる苦難に見舞われました。
その都度、劇場を救ったのが全国の映画ファンや地元住民によるクラウドファンディングによる存続支援です。目標額を大幅に超える支援金が集まった背景には、単なる興行施設としてではなく、「街の文化的な誇り」として劇場を守ろうとする強固なコミュニティの結束がありました。