石田彰といえば、どこか浮世離れしたミステリアスな青年役や、複雑な内面を抱えたトリックスターの演技で右に出る者はいない。その唯一無二の資質が、J.K.ローリングの描く英国魔法界の重厚な世界観と完璧に合致した。
特筆すべきは、台詞の語尾に込められた絶妙な息遣いだ。ハリーを追い詰める場面での「僕がフォークスなら、そんな望みのない戦いはしないがね」といった台詞の端々に、相手を嘲笑うような冷ややかさと、退屈そうにすら聞こえる余裕が漂う。洋画の日本語吹き替えは、原音のリップシンク(口の動き)に縛られる制約の多い作業だが、石田はその制限を逆手に取り、音節の隙間に毒を忍ばせるような精密な芝居を構築した。