2012年8月9日、全国高校野球選手権大会1回戦の桐光学園対今治西戦。甲子園のスタンドを埋めた観客は、回を追うごとに異様な熱気に包まれていきました。桐光学園 野球部の松井裕樹投手が投じるボールに、相手打者のバットがことごとく空を切ったからです。
この試合で記録された「1試合22奪三振」は、1958年に徳島商の板東英二投手が延長18回で記録した25奪三振(9イニング換算では19奪三振)を大幅に更新する、9イニング制における甲子園史上最多記録でした。さらに5回途中から記録した10者連続奪三振も大会新記録となり、全国の野球ファンへ強烈なインパクトを与えました。
当時、対戦校の打者や監督が口を揃えて語ったのが、松井裕樹のスライダーのキレに対する衝撃です。ストライクゾーンの高さからワンバウンドする位置へと鋭角に鋭く沈む軌道は、打者目線では「直球と同じ腕の振りから突然ボールが視界から消える」感覚だったと伝えられています。投球フォームのトップでボールの握りが打者から見えにくく、リリースの瞬間まで球種が判別できないというフォームの特性も、奪三振の山を築いた大きな要因でした。