この作品を伝説へと押し上げた最大の原動力は、主演を務めた真田広之と桜井幸子の圧倒的な演技力である。理性的でありながら内面に脆さを抱える生物教師・羽村を演じた真田広之は、セリフに頼らない眼差しや息遣いだけで、葛藤から解放へと至る人間の感情を微細に表現してみせた。
一方、狂気と透明感が同居するヒロイン・繭を演じた桜井幸子の存在感も異彩を放っていた。当時、若手女優でありながら彼女が見せた儚くも芯のある佇まいは、観客に強い哀愁を植え付けた。撮影現場ではラストシーンに向けて二人の緊張感が極限まで高まり、余計な会話を一切排した空気の中でカメラが回されたという。二人の鬼気迫るセッションが、あの奇跡的なラストカットを誕生させたのだった。