店内に一歩足を踏み入れると、そこには北欧風のミニマリズムとも、インダストリアルなコンクリート打ちっぱなしとも違う、独特の世界観が広がっている。低めの木製チェア、共産主義時代のヴィンテージポスター、剥き出しのレンガ、そして無造作に置かれた観葉植物。
ハノイやサイゴン(ホーチミン)の古き良き街並みを思わせるこのインテリア表現は、「レトロ・モダニズム」として若者たちの心を掴んで離さない。現代社会の過剰なデジタル化に対するアンチテーゼのように、どこか懐かしく、温かみのある不均一さ。低い椅子に腰を深く沈め、ドリップが終わるのをじっと待つ。この「敢えて速度を落とす時間」そのものが、多忙な都市生活者にとって最高の贅沢となっているのだ。