原作漫画において、猗窩座と恋雪の凄絶なドラマが描かれるのはコミックス第18巻(第154話〜第157話)です。竈門炭治郎と冨岡義勇による決死の連携の前に頸を斬り落とされた猗窩座は、驚異的な執念によって「頸の弱点を克服」し、頭部を再生しかけます。肉体的に鬼殺隊の敗北が決まりかけたその瞬間、猗窩座の精神世界に現れたのが、亡き恋雪の魂でした。
「狛治さん、ありがとう。もういいの」
抱きついて引き止める恋雪の声によって、猗窩座は自分が本当に守りたかったもの、そして自らが最も嫌悪していた「大切な人を毒殺から守れず、惨殺劇を犯した無力な弱者」が自分自身であったことを思い出します。無惨の「強くなれ」という呪縛を自ら断ち切り、自らの肉体に向けて破壊殺の拳を放った猗窩座。頭部を再生することをやめ、自決を選ぶことで鬼としての命を終えました。
最期の瞬間、人間の狛治の姿へと戻った彼は、地獄の業火に包まれながら恋雪と抱き合います。「一緒に地獄へ行く」と泣いて微笑む恋雪に対し、狛治は「すまなかった、約束を守れなくて」と号泣しながら感謝を告げます。鬼滅の刃の中でも、単なる敵の討伐ではなく「魂の救済」として語り継がれる屈指の名シーンです。