ネットコミュニティで長く語り継がれる「やったる夫の正体」を一言で定義するならば、「無気力・受動性の象徴であったやる夫を、前向きな闘志と行動力の塊へと反転させた派生キャラクター」です。その誕生は、やる夫スレの全盛期にあたる2000年代後半にさかのぼります。
元ネタの起点となったのは、2ちゃんねるのニュース速報(VIP)板で生まれた国民的AA「やる夫(\^ν\^ / ^ω^)」。当時、日常の愚痴やネットユーザーの自虐を代弁していたやる夫に対し、創作スレ(やる夫スレ)の文化が爆発的に発展する過程で「物語を能動的に動かす熱血主人公」を求める機運が高まりました。そこで有志のAA職人たちが、やる夫のふてぶてしい顔立ちをベースに、眉を釣り上げ、歯を食いしばるような気合の入った表情へと改変。「やったるで!」「やったるぞ!」という前のめりな掛け声とともに投下されたのがやったる夫の由来とされています。
ネット文化史の観点から見ると、やったる夫の登場は「掲示板のアスキーアートが単なる記号から、物語劇の役者(アクター)へと進化した歴史的メルクマール」でもありました。職人たちの手で数多の表情差分が追加され、挑戦、激怒、決意といった熱量の高いシーンを一手に引き受ける主要キャストとしての地位を確立していったのです。