法務省が毎年公表する『犯罪白書』の統計データを紐解くと、日本の受刑者総数のうち禁錮受刑者が占める割合はわずか0.1%未満に過ぎません。年間に新たに刑務所へ収容される受刑者約1万5,000人前後のうち、禁錮刑の受刑者は十数人から数十人程度にとどまり、全体の99%以上を懲役刑が占めてきた事実があります。
極めて限られた層にのみ適用されてきた禁錮刑ですが、一般市民にとって最も身近な適用事例となってきたのが過失運転致死傷罪と禁錮刑の関係です。悪質な飲酒・暴走運転による危険運転致死傷罪には懲役刑のみが定められていますが、通常の不注意による過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法第5条)には「7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金」が規定されており、故意犯ではない過失事故に対して禁錮が選択される運用が定着していました。
裁判において実刑となるか否かを左右するのが執行猶予の適用基準です。刑法第25条の規定により、言い渡された刑期が「3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金」である場合に限り、裁判官の裁量で執行猶予を付すことができます。過失運転事故においては、被告人の前科の有無、被害弁償や示談の成立状況、遺族感情などを総合的に考慮し、3年以下の禁錮刑に4〜5年の執行猶予が付される判決が多数を占めます。しかし、重大な過失があったり救護義務違反(ひき逃げ)が重なったりした場合は、初犯であっても猶予なしの実刑判決が下されます。