観光情報サイトやSNSのクチコミで頻繁に見受けられるのが、「17時過ぎに行ったらシャッター街になっていた」「せっかく行ったのに半分以上の店が休みだった」という悲鳴です。一般的な繁華街や観光地であれば、夕方以降こそが書き入れ時のはずですが、大阪コリアタウンの多くの物販・テイクアウト店は17:00から18:00の間に一斉に閉店します。
この極端に早い営業時間の理由は、観光社会学および都市史の観点から見ると明確です。御幸通商店街は元々、大正から昭和初期にかけて形成された「朝鮮市場(百済市場)」を源流とする、完全な地域密着型の生活市場でした。店舗の2階や奥には店主やその家族が暮らす「職住近接」の長屋構造が色濃く残っており、夜間は居住者の平穏な生活を守る居住空間へと切り替わります。観光客向けのテーマパークではなく、いまも人々の生活が息づく生活道路であることが、早仕舞いの本質的な理由です。
さらに訪問者を悩ませるのが「水曜日定休日」の多さです。これも単なる店舗ごとの気まぐれではなく、大阪市中央卸売市場の本場や東部市場の水曜休開市スケジュールに連動してきた名残です。鮮魚や精肉、野菜の仕入れがストップする水曜日に合わせて市場全体が休むという数十年来の流通慣行が、現代の観光商店街へと変貌を遂げた今も色濃く受け継がれています。水曜日に訪れると主要なキムチ専門店や老舗精肉店、名物屋台の多くが休業しているため、旅行日程を組む際は絶対に避けるべき曜日といえます。