大衆メディアの黎明期における出版・文化事業と深く結びついて発展した挿絵芸術は、かつて日本近代美術の主流からは「通俗的な商業絵画」として扱われることもあった。しかし、時を経てその評価は大きく覆りつつある。
近年、美術館・博物館業界全体においても、大衆文化や商業デザインの文脈から近代美術を再定義する動きが急速に強まっている。弥生美術館は、まさにその先駆者として長年にわたり独自のコレクションを蓄積し、研究を重ねてきた。大衆の欲望や憧れを鏡のように映し出した挿絵アートは、当時の社会風俗や美意識を紐解く上で、純粋美術以上に雄弁な歴史的証言者となっているのだ。