この劇的なAI解読体験の裏には、膨大な歴史的資料のデジタルオープン化という画期的な地ならしがあった。その中核をなすのが、日本最大級の知の殿堂である国立国会図書館デジタルコレクションである。
数百万点に及ぶ貴重な古典籍や古文書が高解像度でデジタル化され、オンラインで誰でもアクセス可能となった。さらに前述のCODH(人文学オープンデータ共同利用センター)が、これらの画像データから膨大な変体仮名やくずし字の学習データセットを作成・公開したことで、世界中の開発者が一気にAIモデルの開発に参入できる環境が整った。
これにより、従来の古文書学は一部の専門家だけのものではなく、オープンサイエンスとして市民に開放された。歴史好きの一般ユーザーがオンラインで解読プロジェクトに参加し、地域の未解読資料を次々と翻刻(文字起こし)していくソーシャル・サイエンスの動きも活発化している。