ベトナム米を炊いた際に広がる特有の香りにショックを受ける人が多い最大の理由は、「日本の主食であるジャポニカ米の無臭・微甘な香りと比較してしまう食文化のギャップ」にあります。しかし、原因を科学的に分析すると、大きく分けて以下の2つの要因が存在します。
第1の要因は、ベトナム米の上位品種(ジャスミン米系や高級品種「ST25」など)に含まれる芳香成分「2-アセチル-1-ピロリン(2-AP)」です。これはポップコーンやトウモロコシ、パンダナス(東南アジアのハーブ)に似た甘く香ばしい芳香化合物で、現地やエスニック料理の世界では高級米の証として高く評価されています。ところが、事前知識なしに「いつもの白米」として炊飯器で炊いてしまうと、室内に充満する濃厚なアロマを「薬品臭」「プラスチックのような異臭」と誤認してしまうケースが多発しています。
第2の要因は、低価格帯の普通白米(インディカ種)における「精米油分の酸化およびぬか層の残留」です。長距離の海上輸送や輸入後の保管環境において、米表面に残った脂質が酸化するとヘキサナールなどの揮発性アルデヒドが生成され、古米特有のいわゆる「ぬか臭さ」「油臭さ」が発生します。特に粘り気の少ない長粒種は乾燥しやすく、吸水時に周囲の臭気を取り込みやすいため、炊飯時の洗い方や水加減を誤ると不快な臭みとして前面に出てしまうのです。