なぜ同じ距離にある図形なのに、背景の色によって文字の輪郭や濃さが違って見えるのでしょうか。その根本的な鍵を握っているのが、光学における「色収差(しきしゅうさ)」という物理現象です。
太陽光や室内照明などの白い光は、さまざまな波長の光が混ざり合ってできています。光がレンズ(人間の目においては角膜や水晶体)を通過して屈折するとき、「波長が短い光ほど強く曲がり、波長が長い光ほど曲がりにくい」という絶対的な法則が存在します。
私たちが視覚検査で目にする赤と緑には、以下のような明確な光学特性の違いがあります。
- 緑色の光(波長約530〜550nm):波長が短いため、角膜や水晶体を通過する際に強く屈折し、網膜の手前側(手元寄り)にピントを結びます。
- 赤色の光(波長約650〜700nm):波長が長いため、屈折する角度が緩やかであり、網膜の奥側(後方寄り)にピントを結びます。
人間の目は、赤と緑のちょうど中間に位置する「黄色(波長約570〜590nm)」の光に最も感度が高くなるよう作られています。目に入った光が網膜の真正面で完璧にピントを結んでいるとき、緑の焦点は網膜のわずかに手前に、赤の焦点は網膜のわずかに奥に、それぞれ等距離で前後に振り分けられます。
その結果、網膜上のぼやけ具合が赤と緑で全く同じになり、脳は「どちらも同じ濃さ・はっきりさで見える」と知覚します。一方で、近視の度数が足りない場合は焦点全体が前方へ寄るため「赤がはっきり見える」状態になり、逆にレンズの度数が強すぎると焦点全体が後方へ引き込まれ「緑が濃く見える」という状態が生じるわけです。