ネット上の情報やSNSの写真だけを見て訪れた観光客が最も誤認しやすいのが、「触れ合い動物園のようにサルを撫でたり抱っこしたりできる」という思い込みです。公式スタッフが口酸っぱく周知している通り、ここに暮らすニホンザルは飼育動物ではなく、国の天然記念物にも指定される正真正銘の野生動物です。人間に対して一定の慣れを示してはいるものの、本質的な野性を保ったまま共存しています。
現地を訪れる際に厳守すべきルールは、主に以下の3点に集約されます。
第1に、屋外で絶対に私物の食べ物やビニール袋を取り出さないことです。知恵の回るサルたちは「カシャカシャと音の鳴る袋=餌が入っている」と学習しています。山道や広場の屋外でペットボトルやお菓子、サンドイッチなどを無造作に露出させた瞬間、背後から飛びかかられて強奪される事故が発生します。飲食物はチャックの閉まるバッグの奥深くに収納しておく必要があります。
第2に、サルの目を至近距離で正面から見つめないことです。霊長類の心理行動学において、相手の目を凝視する行為は「敵対心」や「挑戦状」を意味します。可愛いからと至近距離でカメラを向け、ファインダー越しに目を合わせ続けると、歯を剥き出して威嚇されたり飛びかかられたりする危険があります。撮影時は適度な距離(約2メートル以上)を維持し、視線を逸らしながら自然な表情を切り取る技術が求められます。
第3に、身体に一切触れないことです。子どもザルが足元に近づいてきたとしても、手を伸ばして頭を撫でようとしてはなりません。母親ザルや群れのリーダー格が「我が子が危害を加えられた」と判断した場合、猛烈な勢いで攻撃してくるリスクがあります。山頂小屋の安全な網越しに行う給餌体験のみが、人間とサルが直接交差を許された唯一の聖域であることを肝に銘じるべきです。