少女漫画やトレンディドラマ、あるいは韓国の財閥ドラマでは、プライベートジェットで高級リゾートを飛び回り、高級クラブでシャンパンを豪快に空ける御曹司の姿が描かれます。しかし、現実の日本に暮らす創業家後継者や財閥令息たちの日常は、驚くほど地味でストイックです。
筆者が取材してきた複数の上場企業創業家や老舗企業の次代当主たちの生活から見えてくるのは、「目立つことへの強い警戒感」です。かつてのように派手な車を乗り回し、SNSで贅沢自慢を繰り広げる行為は、コンプライアンスやコーポレートガバナンスが厳格化した現代において、株主や取引先からの信用失墜に直結します。そのため、服は上質だがブランドロゴが主張しないものを身にまとい、移動も質素な国産サルーンを選ぶケースが定着しています。
彼らの生態を観察すると、特有の共通パターン(御曹司あるある)が浮き彫りになります。
- 慶應幼稚舎・学習院・青山学院から広がる強固な幼馴染ネットワーク:小学校から大学まで同じコミュニティで育った仲間同士で強固に結束しており、外部の人間が容易に入り込めない閉じた人脈の中で情報交換を行っている。
- ブラックカードの決済情報は経理と親に筒抜け:限度額無制限のカードを所持しているものの、私的な豪遊を行えば一族の資産管理会社や監査役のチェックが入り、翌朝には父親から呼び出しを食らう。
- 20代はメガバンクや大手商社で「名刺集め」の下積み:新卒でいきなり家業には入らず、三井住友や三菱UFJなどの都市銀行、あるいは三菱商事や伊藤忠商事といったトップファームへ就職。「創業家の看板」を外した状態で泥臭い営業や激務を経験させられる。
- 「家」の存在を隠したがる心理:学生時代や下積み時代、周囲に対等な友人として接してほしいがゆえに、実家が名門企業であることを徹底的に隠し通そうとする。
特にこれが顕著なのが、歌舞伎界の御曹司たちです。梨園と呼ばれる閉鎖的な伝統社会では、物心つく前の3〜4歳で初舞台を踏み、放課後は遊びではなく日本舞踊、鳴物、立ち回りの稽古に明け暮れます。名跡を継ぐという運命から逃れることは事実上許されず、血統と世襲の重圧に20代前半まで苛まれ続ける過酷な環境に置かれています。外見的な華やかさの裏には、個人の自由を極限まで削ぎ落とした規律が存在するのです。