多くの観客が混乱した最大の要因が、作中で描かれなかった「空白の14年の真相」です。ここで整理すべき決定的なポイントは、シンジが引き起こした「ニアサードインパクト」と、世界を完全に壊滅させた「真のサードインパクト」は別個の事象であるという事実です。
公式記録全集やスタッフインタビューで明かされた断片的な設定を統合すると、サードインパクトの経緯は極めて緻密に組み立てられています。加持リョウジが渚カヲルの搭乗するエヴァンゲリオンMark.06の「カシウスの槍」を用いて初号機を停止させたことで、ニアサードインパクトは一度食い止められました。しかしその後、ネルフの司令部中枢においてゼーレと碇ゲンドウの主導により、真のサードインパクトが発生します。加持が自らの命を犠牲にして儀式を途中で阻止するまでの間に、リリスは巨大化して異形の骸となり、地球の生態系は完全に壊死しました。
この惨禍を経て、ネルフの非人道的な「人類補完計画」に反旗を翻したミサト、リツコ、加持の賛同者たちによって結成されたレジスタンス組織が「ヴィレ」です。一方のネルフは、ゲンドウと冬月コウゾウ、そしてカヲルのみが残る廃墟同然の機関へと変貌しました。『Q』の劇中で描かれたヴィレとネルフの対立は、かつての味方同士が人類の生存権と死者の再生という相容れないイデオロギーを懸けて殺し合う、残酷な内戦の姿そのものでした。