街道沿いを走れば必ず視界に入った名店が、なぜこれほどまでに縮小を余儀なくされたのでしょうか。その背景には、単なる一企業の業績不振にとどまらない、日本の外食産業における構造的パラダイムシフトと経営破綻の連鎖が存在します。
かつて広島県福山市に本拠を置いていた運営会社・株式会社アマギリは、フランチャイズ展開と直営店展開を巧みに組み合わせ、最盛期には広島・岡山・山口・香川など中国・四国地方に数十店舗を数える巨大ネットワークを構築していました。ロードサイド型の大型店舗で、駐車場を広く確保し、座敷席を豊富に設けてファミリー層の週末需要を取り込むモデルは、1980年代から1990年代にかけて外食産業の勝利の方程式でした。
潮目が劇的に変化したのは2000年代初頭です。讃岐うどんブームを背景に急成長した「丸亀製麺」や「はなまるうどん」といった低価格・高回転のセルフ式大手チェーンが全国へ猛攻を仕掛けました。天霧うどんが得意としていた「フルサービスのフルスペックうどん店」は、ホールスタッフの人件費、広い客席にかかる空調費や家賃、調理にかかる手間といった高コスト構造を抱えていました。1杯数百円・提供時間1分未満を武器にするセルフ式モデルに対し、価格競争力と回転率の両面で劣勢に立たされたのです。
さらに追い打ちをかけたのが、原材料価格の高騰と消費者のライフスタイルの細分化でした。報道や帝国データバンク等の倒産速報資料によると、資金繰りの悪化に伴い運営元のアマギリは2010年代にかけて事実上の経営破綻へ追い込まれました。これにより直営店は一斉に閉鎖され、残された一部のフランチャイズ加盟店や独立事業主が店舗を引き継ぐ形でしか存続できなくなったことが、街中から天霧の看板が一気に消滅した最大の閉店理由です。