皮をむいたり輪切りにしたりした直後から始まる褐色の変化には、明確な生化学的理由が存在します。バナナの果肉細胞にはポリフェノール化合物(主にドーパミンやタンニン類)と、酸化酵素であるポリフェノールオキシダーゼ(PPO)が別々の区画に格納されています。包丁で切ったり強い衝撃を与えたりすると細胞壁が破壊され、これらが大気中の酸素と結びついて酸化反応を起こし、「メラニン」と呼ばれる褐色色素を瞬時に生成します。
この酸化酵素PPOは、温度が20℃〜30℃前後の環境で最も活発に働きます。そのため、常温の室内にそのまま放置すると、わずか15分から30分程度で表面がくすんだ茶色へと変化してしまいます。バナナカット後変色防止を成功させるためには、「酵素の働きを鈍らせる(pHの低下)」「酸素との接触を物理的に遮断する」「抗酸化成分を補う」という3つの防護壁をいかに素早く構築するかが勝負の分かれ目となります。