絶望的な医療宣告のなかで、決して諦めなかったのが夫の源高志氏でした。源氏は医師から「脳への刺激を送り続けることが唯一の奇跡への道」と助言を受けると、毎日病室に通い詰め、常識を超えたアプローチを実践し始めました。
源氏が採用したのは、佳那さんの記憶と五感に直接訴えかけるリハビリ手法でした。病室には佳那さんが生前愛用していた高級香水の香りを漂わせ、彼女が好きだったモーツァルトの楽曲やジャズを枕元で流し続けました。さらに、過去に出演した名作ドラマの台本を手に取り、夫自らセリフの掛け合いを何時間も語りかけたのです。
その執念が実を結んだのは、発症から数か月が経過した初夏のことでした。源氏が耳元で「晃子、起きろ」と呼びかけながら手を握った瞬間、彼女の指先がかすかに握り返され、閉ざされていた瞼がゆっくりと開いたのです。その後の検査で脳波に明らかな自発活動が確認され、医療関係者が「医学的には説明がつかない奇跡的な覚醒」と驚嘆した瞬間でした。