デリケートゾーンの皮膚や粘膜の隙間にいつの間にか溜まる白いポロポロとした物質の正体は、医学用語で「恥垢(英語:smegma / スメグマ)」と呼ばれます。この物質が病的な分泌物と誤解されやすい最大の理由は、その独特な質感と白濁色にあります。しかし、恥垢ができる理由は極めてシンプルであり、人体の正常な代謝メカニズムに由来しています。
皮膚の表面では日々新しい細胞が生まれ、古い細胞が角質となって剥がれ落ちています。腕や脚であれば自然に入浴や摩擦で脱落しますが、性器周辺は皮膚が複雑に折り重なり、包皮や小陰唇のひだによって覆われているため、脱落した角質が外へ排出されにくい構造をしています。この剥離上皮(垢)に、アポクリン腺や皮脂腺から分泌される皮脂、尿の微量な残り、さらには皮膚の常在菌が混ざり合ってペースト状に凝固したものが、まさに恥垢の原因です。
日本小児泌尿器科学会や日本性感染症学会の学術知見においても、恥垢そのものは本来無害な生体物質であると明記されています。体質によって皮脂の分泌量が多い思春期から青年期にかけて生成ペースが速まる傾向はあるものの、性別を問わず乳幼児から高齢者まであらゆる年代に生じます。「自分だけが不潔なのではないか」と思い詰める必要はまったくありません。