ネット上の掲示板やSNSで定期的にトレンド入りするのが、「子どもの頃に観てトラウマになった」と語られるダーク系楽曲群です。なぜ教育的な公共放送の枠組みで、これほどまでに不気味で恐ろしい名曲が数多く生まれたのでしょうか。そこにはみんなのうたトラウマ曲理由とも言うべき、独自の制作体制と作家性に根ざした背景が存在します。
筆頭に挙げられるのが、大貫妙子作詞・作曲による『メトロポリタン美術館』です。夜の美術館に忍び込んだ少女が、タイムトラベルの果てに「大好きな絵の中に閉じ込められ、ミイラの花嫁になって眠る」という結末を迎えます。このメトロポリタン美術館の真相について、作家の大貫妙子は当時のインタビュー等で「死や永遠という概念への純粋な憧れ、美しいものに閉じ込められたいという幻想」を表現したと明かしています。子どもを子ども扱いせず、死生観や孤独の美しさを妥協なく描いたからこそ、不気味さと同時に抗いがたい神秘性を帯びているのです。
さらに、谷山浩子が手掛けた『まっくら森の歌』も外せません。淡々としたアルペジオと哀愁を帯びたウィスパーボイス、そして「まっくら森の奥の足元には、昨日落とした夢がある」という抽象的で深遠な世界観は、多くの子どもたちに「底知れぬ怖さ」と「強烈な叙情性」を同時に植え付けました。NHKのディレクター陣がアーティストの作家性に一切の妥協を求めず、表現の自由を最大限に尊重した結果、時代を超えて語り継がれる芸術的トラウマソングが誕生したと言えます。