警察官が拳銃を使用する際の法的な根拠規定は、警察官職務執行法第7条(武器の使用)に集約されています。同条文では、警察官が職務を執行するにあたり、事態に応じ合理的に必要と判断される限度において武器を使用できる旨が明記されていますが、相手に危害を与える射撃(危害射撃)には極めて厳しい制約が課されています。
具体的に相手に危害を及ぼす射撃が許可されるのは、刑法上の「正当防衛」または「緊急避難」に該当する場合、あるいは死刑・無期・長期3年以上の懲役・禁錮にあたる重大凶悪犯が抵抗・逃亡しようとし、これを防ぐための他の手段がない場合に限定されます。
さらに、現場の運用実務を規定する警察庁訓令「警察官等拳銃使用及び取扱い規範」に基づき、警察拳銃使用基準は以下のような段階的プロセスを原則としています。
- 第1段階(口頭警告): 「撃つぞ、刃物を捨てろ」などと明確な口頭警告を発する。
- 第2段階(構え・威嚇): 拳銃を取り出して相手に向け、視覚的威圧を与える。
- 第3段階(威嚇射撃): 上空や安全な方向に向けて威嚇射撃を行う(周囲の安全が確認できる場合に限る)。
- 第4段階(身体への射撃): 凶器を振り下ろす寸前など、生命に切迫した危険がある場合に限り、足や腕など致命傷を避ける部位を狙って射撃を行う。
ただし、相手が突発的に刃物を持って至近距離から突進してきた場合など、警告や威嚇射撃を行う猶予が一切ない緊急事態においては、段階を省略して直接射撃を行うことが法的に容認されています。この「極限状態での数秒の判断」が常に現場警察官に求められます。