サヘラントロプス・チャデンシスの最大の特徴は、原始的な類人猿の特徴と、進化的な初期人類の特徴が複雑に入り混じった「モザイク進化」の典型を示している点にあります。
まず原始的な要素として挙げられるのが脳容量です。計測された脳の容積は約360〜380ccにとどまり、これは現生のチンパンジーの平均的なサイズ(約400cc弱)とほぼ同等です。また、眼窩(目のくぼみ)の上には極めて分厚い眼窩上隆起(眉びさし)が発達しており、頭部後方の筋肉付着部も頑強でした。
その一方で、顔面部は類人猿のように前方に突き出ておらず、驚くほど平坦な構造を保っていました。さらに決定的なのが犬歯の縮小です。類人猿のオスに見られるような長く鋭い威嚇用の犬歯は失われており、先端がすり減る形状は人類特有の咀嚼パターンを示唆していました。奥歯のエナメル質もチンパンジーより厚く、硬い植物質を含む多様な食物を口にしていたことが伺えます。