料理の現場において、昭和から平成にかけて広く流布した「肉は強火で表面を焼き固めて肉汁を閉じ込める」という言説は、現代の調理科学において明確に否定されています。肉の表面を急激な高温に晒すと、筋原線維タンパク質(アクチン・ミオシン)が急速に熱変性を起こして激しく収縮し、内部の水分をスポンジのように外へ絞り出してしまうからです。
特に鶏もも肉の場合、皮の下に存在する豊富な皮下脂肪をゆっくり時間をかけて溶出(レンダリング)させなければ、皮が厚ぼったくブヨブヨとした食感で残ってしまいます。強火で焼くと、脂肪が溶け切る前に表面だけが黒焦げになり、中は生焼けという最悪の結果を招きます。「弱火から中火でじっくり皮の脂を抜き、その脂で自らをカリカリに揚げる」ことこそが、科学的に正しいアプローチです。
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