一方で、冒頭で触れた「意外な落とし穴」は、作業者の慣れや安全認識の欠如から発生します。産業現場におけるヒヤリハット事例を検証すると、事故の9割以上が「可燃性ガスへの引火」と「人体への接触による凍傷」に起因しています。
最大の警戒ポイントは「急冷スプレー可燃性注意点」です。現在流通している冷却スプレーの中には、地球温暖化係数(GWP)の抑制を目的に、可燃性のあるDME(ジメチルエーテル)や微燃性ガスを採用している製品が散見されます。基板検査は往々にして「通電状態」で行われます。スプレーを噴霧した瞬間に基板上のリレー接点が開閉して小さな火花が散ったり、劣化したコンデンサから放電が起きたりすると、滞留した可燃性ガスに引火し、手元で一瞬にして火炎放射器のような爆燃が発生する惨事につながります。特に筐体内部の換気が悪い密閉スペースでの噴射は極めて危険です。
次に深刻なのが「冷却スプレー凍傷危険性」です。「冷たい風が出るだけ」という感覚で至近距離から素手でノズル付近を押さえたり、誤って皮膚に液化ガスを数秒間浴びたりした場合、皮下組織の水分が瞬時に氷結し、第2度から第3度の重篤な凍傷(組織壊死)を引き起こします。医療現場の報告でも、作業中の不用意な噴射によって指先の感覚障害や不可逆的な皮膚損傷を負った症例が毎年確認されています。「服の上からなら安全」という思い込みも危険であり、布地にしみ込んだ極低温液体が皮膚に密着し続けることで、かえって凍傷が重症化するケースすらあります。