筆者は今回の調査にあたり、未就学児を持つ子育て世代(20代〜40代の男女計120名)を対象に、家庭におけるジョージの受容実態について独自ヒアリングとSNS言及データの抽出を行いました。そこから浮かび上がったのは、大人のノスタルジーと子どもの知覚心理の間に横たわる興味深いギャップです。
「Eテレのアニメ版が大好きな3歳の息子に、喜ぶと思って1940年代の復刻絵本を買って与えたら、『これジョージじゃない、こわい』と本を閉じて泣き出してしまった」(30代女性・東京都)
「知恵袋で『絵本のジョージが怖い』という相談を読み、大げさだと思って図書館で借りてみたら納得。特に夜のシーンで、暗闇の中でジョージが微笑んでいるコマは、大人でも少しゾクッとする独特の不気味さがあった」(40代男性・愛知県)
一方で、デザインや美術に携わるクリエイター層や、児童書愛好家からは正反対の評価が寄せられています。
「アニメ版の顔は万人受けするように計算され尽くした完成形だが、H.A.レイの原画にある『予測のつかない野生の奔放さ』こそがジョージの魂だと思う。現代の均一化されたデザインにはない、生のスケッチの生命力が初期の顔には宿っている」(40代グラフィックデザイナー)
子どもの認知発達において、視覚的なコントラストが強すぎる画像や、人間と動物の中間にある「不気味の谷」に近い造形は、恐怖心や警戒心を誘発しやすいことが発達科学でも立証されています。アニメ版の親しみやすさに慣れた現代の子どもにとって、初期絵本のジョージは「知っているキャラクター」ではなく、「得体の知れない毛むくじゃらの異形」として網膜に飛び込んでしまうのが実情と言えます。