前田監督の指導の原点は、母校である駒澤大学で学んだ勝負師としての執念にある。圧倒的な練習量と厳しい規律で勝利を引き寄せる伝統的なスタイルを体現してきた人物だ。しかし、國學院大學の監督に就任して以来、そのままのやり方を持ち込むことはしなかった。
「指示されて動く選手は、本番のギリギリの場面で脆さを見せる。自分で考え、判断し、走れる『自走型』の選手を育てなければ、頂上決戦は制せない」
練習メニューの意図を選手自身に説明させ、目標タイムの設定もミーティングで議論させる。監督と選手の立場を超えたフラットな対話こそが、選手の主体性を劇的に向上させた。型にはめるのではなく、個性を伸ばす。指揮官の柔軟な思考力こそが、近年の驚異的な躍進を支える真のエンジンなのだ。