石田家の歩みを振り返るうえで外せないのが、父親の仕事に伴う幾度もの引っ越しである。少女時代、一家は沖縄県での生活を経て、台湾へと渡った。見知らぬ土地や文化の違いに戸惑う子どもたちを、優しく、かつ力強く支えたのが母親だった。
気候や言語の異なる異郷の地にあっても、母は家庭の中に揺らぐことのない安心感を作り出した。日々の食卓を工夫し、地域のコミュニティや異文化を受け入れるしなやかさを子どもたちに背中で示したのだ。こうした海外や地方での多様な実体験こそが、のちに石田ゆり子が纏う豊かな感受性や、どのような環境にも物おじしない凛とした強さの源泉となっている。