本作を語る上で欠かせないのが、倒叙ミステリーという形式を日本のお茶の間に広く浸透させた功績だ。物語の冒頭で犯人と犯罪の全貌が明かされ、主人公がいかにしてそのトリックを切り崩していくかを描く構造。犯人捜しのサスペンスではなく、知的な心理戦を純粋に味わうエンターテインメントとしての完成度は極めて高い。
従来の刑事ドラマにありがちな銃撃戦や激しいアクションシーンを削ぎ落とし、純粋な対話と論理的思考だけで犯人を追い詰めるスタイルはまさに革新的であった。三谷幸喜が紡ぐ脚本は、ユーモアと緊張感が見事に同居しており、視聴者に一瞬の隙も与えない。名刑事・古畑任三郎が放つ何気ない一言が、やがて犯人の外堀を追い詰めていくプロセスは、何度観ても色あせない快感をもたらす。