田中邦衛の代表作といえば、国民的ドラマ『北の国から』の黒板五郎役を外すことはできない。不器用で、泥にまみれながらも子供たちを愛し続けた父親像は、日本中の涙を誘った。一見すると、冷徹な光速の能力者である海軍大将ボルサリーノとは正反対の役柄に思えるかもしれない。しかし、その根底にある「哀愁と人間味」には確かな共通点が存在する。
光の速さで移動する圧倒的な強者でありながら、時折見せる物哀しい表情や、かつての仲間や弟子に対する複雑な情念。黄猿が秘めるその多面的な感情の奥行きは、まさに『北の国から』などで田中邦衛が長年培ってきた「哀愁を帯びた人間ドラマ」の演技と深く響き合っている。単なる悪役でも完璧なヒーローでもない、割り切れない大人の情念がキャラクターに圧倒的なリアリティを与えている。