ネットの掲示板やSNSでは、「ママチャリを改造して時速45km出た」「ロードバイクで車の流れをリードしている」といった過激な書き込みが散見されます。しかし、サイクルショップの整備士やベテランプロ選手が語る実態は、そうしたネット上の言説とは大きく乖離しています。
都内の老舗スポーツサイクルショップのチーフメカニックは、現場目線でのリアルを次のように指摘します。
「お客様の中で『サイコン(速度計)で時速50km出た』と仰る方の多くは、下り坂の瞬間値か、タイヤ周長の計測設定ミスであることが大半です。平地で正真正銘の時速50kmを数分間維持できるのは、実業団やエリートクラスの限られた競技者だけです。一般の方が公道でスピードを過信することは、極めて危険な事故の引き金になります。」
実走現場における最大のリスクは、スピードそのものよりも制動距離(ブレーキをかけてから止まるまでの距離)の急激な伸びです。自転車のブレーキシステムは、時速20km前後での安全停止を基本設計としています。時速40kmで走行している時の運動エネルギーは時速20km時の「4倍」に跳ね上がり、路面ウェット時や小径ホイールでは制動距離が20メートル以上に及ぶこともあります。
知恵袋やコミュニティの生の声を見ても、「下り坂でスピードに乗りすぎてコーナーを曲がりきれずガードレールに激突した」「時速30kmで走行中、飛び出してきた歩行者を避けきれず落車して鎖骨を骨折した」といった痛切な体験談が後を絶ちません。公道における高速走行は、ドライバーからの視認性の低さ(速度感覚のズレ)も相まって、重大インシデントに直結する脆弱性を抱えています。