インターネット上の質問サイトや知恵袋などで頻繁に見受けられるのが、「初夏という言葉の響きから、6月下旬や7月上旬まで『初夏の候』を使い続けて恥をかいた」という失敗談です。この背景には、「現代の体感気候」と「手紙の伝統的な暦ルール」の乖離があります。
温暖化の影響により、5月から夏日・真夏日を記録する年が増加しています。そのため「6月後半こそが初夏の本番」と錯覚しがちですが、手紙文化における6月下旬はすでに「仲夏(ちゅうか)」あるいは「盛夏(せいか)」の領域に入ります。さらに6月中旬以降は全国的に梅雨期に入るため、青空や新緑を想起させる「初夏の候」を使うと、雨が降り続く現場の実態と大きくズレてしまい、受け手に違和感を与えてしまいます。
6月5日頃(芒種)を過ぎた段階で「向夏の候」や「薄暑の候」へシフトし、梅雨入りが確認された地域宛てには「梅雨の候」「長雨の候」へと速やかに切り替えるのが、マナーに長けた書き手の鉄則です。