ネット上のギターコミュニティや機材フォーラムでは、「KemperとStrymonのペダルを揃えればサカナクションの音は再現できる」という短絡的な見解が散見されます。しかし、現場のサウンドエンジニアリングの観点から言えば、これは明らかな誤解です。
第一の盲点は、ピックの選択とアタックのピッキングニュアンスです。岩寺基晴は薄め〜標準的な硬さのオニギリ型(またはティアドロップ)ピックを用い、弦に対して平行に近い角度で浅くヒットさせることで、余計な低音弦の暴れを抑えたブライトなトーンを生み出しています。どれほど高額なハイエンド機材を揃えても、ピッキングが強すぎて弦がバズったりアタックが潰れてしまえば、あのクリスタルクリーンなカッティングは決して鳴りません。
第二の盲点は、イコライジングにおけるローカット(ハイパスフィルター)の徹底です。サカナクションのアンサンブルでは、草刈愛美のベースラインと江島啓一のキック、さらにはシンセベースが低音域(40Hz〜150Hz付近)を強固に支配しています。そのため、岩寺のギターサウンドはギター単体で聴くと「少し線が細い」と感じるほど大胆にローエンドがカットされており、バンド全体で混ざった瞬間に初めて完璧な重心バランスになるよう計算されています。