中央線の鉄道唱歌に幻の歌詞?甲武鉄道の歴史と現在の停車駅を徹底検証

中央線の鉄道唱歌に幻の歌詞?甲武鉄道の歴史と現在の停車駅を徹底検証

中央線の鉄道唱歌に幻の歌詞?甲武鉄道の歴史と現在の停車駅を徹底検証について専門的な視点から解説いたします。専門家の見解をご確認ください。

明治期に甲武鉄道から中央本線初期にかけて執筆されたとされる歌詞は、当時の御茶ノ水や飯田町を起点に、武蔵野の自然と甲州の険しい山道を対比させる見事な筆致で書かれています。東海道線の海沿いの景観とは対照的に、水路と緑、そして歴史ある城下町・宿場町が次々と登場します。

現存する資料・草稿に記された代表的な節の現代語訳と、当時の風景描写を読み解くと、100年以上の時を超えた当時の車窓が鮮やかに蘇ります。

【幻の中央線鉄道唱歌(抄)と現代語訳】

其の一:お茶の水発ちてゆく汽車の つばさも軽く飯田町 牛込めぐりて四谷をば 後に見送る新宿の
(現代語訳:御茶ノ水駅を出発した汽車は、軽快に翼を広げるように飯田町へ進み、牛込小石川の堀端をめぐって四ツ谷を通過し、やがて視界は広壮な新宿へと向かっていく)

其の二:柏木あとに中野駅 桃園ならぶ高円寺 杉並すぎて荻窪や 芒(すすき)吹かるる武蔵野に
(現代語訳:柏木[現在の東中野]を背にして中野駅に到着し、桃園の面影が残る高円寺を抜ける。杉並、荻窪へと差し掛かれば、風に揺れるススキがどこまでも広がる武蔵野の原野が広がる)

其の三:玉川上水影清く 小金井の桜雲と咲き 境立川うちすぎて 八王子へと急ぐなり
(現代語訳:澄んだ水をたたえる玉川上水が光り、名高い小金井の桜が一面の雲のように咲き誇る。境[武蔵境]や多摩川の恵みを受ける立川を通り過ぎ、汽車は織物の街・八王子を目指してひた走る)

其の四:浅川わたりて高尾山 鳥越え難き笹子山 抜くや長きトンネルの 出づれば見ゆる甲府花
(現代語訳:浅川の水流を渡れば霊峰・高尾山がそびえ立ち、かつて鳥さえ越えるのを拒んだ峻険な笹子峠を、世紀の大工事で貫いた長いトンネルで突破する。そこを抜けると、眼下には甲府盆地の豊かな果樹と一面の花々が現れる)

大和田建樹独特の端正な美文は、武蔵野がまだ一面の田園風景であり、多摩地域が江戸情緒を残していた頃の牧歌的な空気を写し取っています。新宿を出ると一面の野原であり、立川や八王子が遠い旅路の要衝であったことが、七五調のリズムから伝わってきます。

鈴木 陽菜
著者

鈴木 陽菜

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