日本国内で長年語り継がれてきた「新米を炊くときは水を1割ほど減らす」という調理法。この言説が生まれた昭和から平成初期の時代、収穫直後の米は水分含有量が高く、乾燥技術も現在ほど均一ではありませんでした。当時は水分量が16%以上含まれた状態で出荷されることも珍しくなく、通常の水加減では柔らかくなりすぎたため、水を減らす知恵が有効だったのです。
しかし、農林水産省の規格や近年のカントリーエレベーター(大規模乾燥調製施設)におけるコンピュータ制御の乾燥技術により、現在流通する玄米・白米の水分含有量は年間を通じて14.5%〜15.0%前後に厳密にコントロールされています。つまり、新米と収穫から数か月経過した米とで、含まれる水分量自体の差はわずか0.5%〜1.0%未満に過ぎません。
それにもかかわらず昔の感覚で水を10%以上減らしてしまうと、米の中心部まで熱が通らず、表面だけが柔らかくて芯が残る失敗を引き起こします。現代の新米が柔らかく炊きあがりやすい本当の理由は、水分含有量の多さではなく、米の細胞組織が瑞々しく「吸水スピードが極めて速いこと」にあります。