兵庫県立コウノトリの郷公園を訪れる際、まず知っておくべきは「1971年に日本の野生コウノトリが一度完全に絶滅した」という重い歴史的事実です。農薬の普及や開発による湿地の消失、乱獲によって追いつめられたコウノトリを守るため、豊岡の地で人工飼育が開始されたのは1965年のことでした。旧ソ連から譲り受けた幼鳥などを元に繁殖の試行錯誤が重ねられ、1989年に初めて人工孵化に成功。そして2005年9月、世界初となる野生復帰のための試験放鳥が行われました。
現在では野外に生息するコウノトリは全国で400羽以上へと増加し、その多くが豊岡の空を拠点に全国各地へ飛来しています。園内にある「公開ケージ」は、傷病などで野生に帰ることができない個体が保護・飼育されている施設ですが、天井ネットのない構造になっている区画もあり、空から野生の個体が自由に降り立って給餌場を共有するダイナミックな姿を観察できます。
手の届きそうな距離で観察できる巨大な嘴と、翼を広げると約2メートルにも達する優雅な飛翔は圧巻の一言です。嘴を激しく打ち鳴らして仲間とコミュニケーションをとる「クラッタリング」の乾いた音響が周囲の山々に響き渡る瞬間は、人工物の中で見る鳥類とは一線を画す感動を与えてくれます。