五十嵐淳子さんを巡っては、今回の訃報以前から検索エンジン上で「死因」「病名」「死亡説」といった不穏なキーワードが散見されていました。なぜ存命中からこのような噂が生まれ、今回の急逝によって検索が急増するに至ったのでしょうか。その背景には3つの構造的要因が存在します。
第一に、メディア露出のコントロールと事業への専念です。五十嵐さんは結婚・出産を経て女優としての第一線を退き、東京・渋谷区でフラワーショップ「パセリ」をオープン。店舗経営やフラワーアレンジメント教室の主宰へと主軸を移しました。テレビや映画の現場から距離を置いたことで、「現在の姿が見えない」「表舞台から消えたのは重病を患っているからではないか」という憶測がネット空間で一人歩きしやすい土壌が生まれていました。
第二に、シニア世代の著名人に対するアルゴリズムの連想性です。70代を迎えた往年の名女優に対し、検索サジェストが健康不安や過去の病歴を自動的に候補表示する傾向があり、実態のない「死亡説」が定期的に再浮上していました。
そして第三が、今回の「病名非公表による急逝」という発表形式です。長年第一線で活躍した著名人が「急病」とのみ公表されて逝去した場合、多くの読者が「何が起きたのか」という真因を確かめようと検索行動に走る心理的メカニズムが働きます。遺族側としては静かに見送りたいという配慮である一方、情報の空白が詮索を生むという現代メディア特有の現象が生じています。