漢字で「馬が酔う木」と書く馬酔木の読み方と由来には、日本の自然観察史と古語の変遷が色濃く反映されています。この植物の葉や茎には強力な神経毒が含まれており、草食動物である馬が誤って口にすると、足腰が立たなくなり、まるで酒にひどく酔っ払ったかのように千鳥足になって倒れ伏してしまいます。この強烈な現象をそのまま漢字に当てはめた表記が「馬酔木」です。
一方、和名の呼び名である「あせび」と「あしび」にはどのような違いがあるのでしょうか。言語学的な変遷をたどると、原義は「悪し実(あしみ)」あるいは足が痺れて動かなくなる状態を指す「足癈(あしじひ)」が転訛したものとされています。
古代の奈良時代には「あしび」と発音され、『万葉集』に収録された和歌でもすべて「あしび」として詠まれていました。時代が下るにつれて発音が滑らかになり、現代の植物学上の標準和名としては「アセビ(あせび)」が採用されています。現在では、日常会話や園芸分野では「あせび」、古典文学や短歌・俳句の文脈では伝統的な「あしび」と呼び分けられるケースが一般的です。