火のない所に煙は立たないと言われるが、デジタル空間では微かな影が巨大な怪物に化ける。発端となったのは、バラエティ番組やトークショーに出演した際の「フェイスラインがシャープになった」「少し痩せたのではないか」という視聴者の些細な投稿だった。年齢を重ねれば骨格の印象や肉付きが変化するのは自然な摂理であるにもかかわらず、切り取られたキャプチャ画像がひとり歩きし、「激やせ=重病」という安易な図式が瞬く間に構築されていった。
加えて、舞台公演の合間に見られた一時的なスケジュール調整が「極秘休養」と曲解されたことも拍車をかけた。過密な撮影スケジュールを縫って活動するベテラン女優にとって、次作への準備期間を設けるのは極めて通常業務の範囲内だ。しかし、情報が断片化され消費される過程で、あたかも健康不安によって活動を休止せざるを得ない状況に追い込まれたかのような物語が勝手に紡ぎ出されてしまったのである。