寺脇康文の役者人生の原点は、三宅裕司率いる「劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)」にある。20代前半の血気盛んな青年だった寺脇が演技の基礎を徹底的に叩き込まれ、汗を流していたその稽古場こそが、現在の妻との運命の出会いの場だった。
当時、妻もまた同じ劇団に身を置き、演劇の道を志す仲間の一人だった。舞台演劇の現場は朝から深夜まで稽古が続き、経済的な見返りよりも表現への情熱が先立つ過酷な世界だ。互いの泥臭い努力やすすけた稽古着姿、悔し涙を流す姿まで包み隠さず知る関係だったからこそ、二人の間に芽生えた感情は単なる恋愛感情を超えた深い同志愛へと育っていった。
「役者として何者でもない自分」を最初から知っている女性。売れていく過程での変化に惑わされず、常に等身大の寺脇康文を見つめてくれる存在が、この劇団時代にしっかりと隣に寄り添っていた。