日本の路上に林立する柱は、決して単一の事業者が単独で運用しているわけではない。その大半は、東京電力ホールディングスをはじめとする大手電力会社、あるいは日本電信電話(NTT)の資産であり、双方が互いの柱を相互利用する共架設備(きょうがせつび)という形態で成り立っている。
地上10メートル前後の空間には厳格な序列が存在する。最上部を走るのは高圧・低圧の電力線、その下部に一定の離隔距離を保って電気通信事業者が敷設する光ファイバーや電話線、さらにはケーブルテレビ回線が束ねられる。この縦方向の空間利用ルールは、感電事故防止や保安基準を満たすための高度な技術的妥協の産物だ。しかし、いざ地中化や撤去となると、電力側と通信側で工事負担金の割合や移設手順をめぐる複雑な利害調整が発生する。一本の柱を抜く作業の裏側には、常にインフラ事業者間の緻密な交渉と設計のせめぎ合いが存在している。