「清少納言こそ、りりしうしてほこりかに誇り散らしたる人…」——『紫式部日記』に残された有名な清少納言批判。一見すると痛烈な個人攻撃に見えるこの文章だが、研究者の間では異なる読み解きが進んでいる。
文面を精読すると、紫式部が清少納言の漢字の知識や漢詩文の教養を細かくチェックし、その才能を極めて高く評価していたからこそ生じた劣等感と対立意識が見えてくる。自分と同じように高い教養を持ちながら、正反対の生き方を選んだ先達への嫉妬と、文人としての強い意識。陰湿な悪口の裏には、同じ時代を孤高の才気で駆け抜けた同業者への屈折したリスペクトが隠されていた。