片栗粉と薄力粉の決定的な違いは、植物としての起源とタンパク質の有無に集約されます。市販されている片栗粉の原材料は、ほぼ100%が馬鈴薯澱粉(ばれいしょでんぷん)です。かつては自生するユリ科の植物「カタクリ」の根から採取されていましたが、明治以降に北海道などでジャガイモ栽培が普及して以降、純度の高いジャガイモデンプンが標準となりました。純粋なデンプン質で構成されているため、タンパク質や脂質は極めて微量です。
対する薄力粉の原料は小麦です。小麦粉の中でもタンパク質含有量が約6.5〜9.0%と低い軟質小麦が用いられます。薄力粉に水を加えて物理的な力を加えると、小麦固有のタンパク質である「グリアジン」と「グルテニン」が結合し、弾力と粘りを持つグルテンを形成します。このグルテンネットワークこそが、焼き菓子や衣の構造を支える骨格となります。
文部科学省の日本食品標準成分表を確認すると、熱量自体の差はわずかですが、デンプン粒の大きさとアミロース・アミロペクチンの構成比が異なります。馬鈴薯澱粉のデンプン粒は小麦デンプンに比べて非常に大きく、水を吸って膨張する力が圧倒的に強力です。この物理特性が、調理時の「とろみの強さ」や「揚げ衣の硬さ」にダイレクトに現れます。