「昔の投手のほうが体感は速かった」「今のスピードガンは甘いのではないか」といった議論がネット掲示板やSNSで定期的に巻き起こります。しかし、これには明確な測定技術の変遷という背景が存在します。
かつてのスピードガンは、捕手の手元に近い位置での速度(終速に近い数値)を拾うケースや、測定器の設置角度による誤差が少なくありませんでした。これに対して現在のMLBおよびNPB主要球場では、高性能レーダーと光学カメラを組み合わせた「スタットキャスト(Statcast)」や「トラックマン」などのトラッキングシステムが標準装備されています。
この最新システムでは、投手の指先からボールが離れた瞬間(リリースポイント)の最高初速をミリ秒単位で測定しています。ボールは空気抵抗によってホームベースに到達するまでに約8〜10%減速するため、リリース時の「104マイル(約167.4km/h)」は、捕手のミットに収まる頃には約154〜156km/h程度まで落ちています。技術の均一化によって数字のブレが排除された結果、現代の「104マイル」は正真正銘、純粋なリリース速度の極限値として証明されています。