つば九郎の最大の武器といえば、試合前やイニング間に繰り出されるスケッチブックでのフリップ芸だ。その日のスポーツ紙の1面ネタから政治家の不祥事、他球団選手の移籍問題まで、攻めた時事ネタを迷いなくフリップに書きつける。その絶妙な間と手書きの味のある文字は、長年の経験から生まれる職人技そのものと言える。
声を一切発しないサイレントコメディでありながら、首の角度、肩の揺らし方、一瞬の間で喜怒哀楽を完璧に表現する。着ぐるみを着た状態での微細な感情表現は、並大抵の演技力では不可能だ。観客はそこに、一流の喜劇役者と同等の演技美学を感じ取っている。