VTuber業界は急速に産業化とメガスケール化を進めてきた。タレントの素性や前職がオープンになり、過去のファンコミュニティをそのまま引き継ぐケースも珍しくなくなった現代において、彼のスタンスは極めて異端であり続けている。何も明かさないからこそ、人々は画面の向こうの影に魅了される。
リスナーが真に求めているのは、安っぽい生身の身元ではない。前世という答え合わせを拒絶し、バーチャルの皮膜を一枚たりとも剥がさせないそのストイシズムにこそ、ファンは熱狂しているのだ。「虚空」と称される彼の領土において、現実の肉体など初めから無価値なのかもしれない。