近年、着付けの誤認で圧倒的に増えているのがデジタルツールの錯覚だ。洗面台の鏡を見て「よし、右手が上になっているな」と誤認したり、スマートフォンのインカメラで撮影した自撮り写真が左右反転(ミラーリング)していることに気づかず、SNS上で「左前を着ている」と指摘されて炎上するケースが相次いでいる。
着付けマナーの普及に努める一般社団法人日本きもの連盟や、公益社団法人全日本きものコンサルタント協会の指導者たちも、この「鏡像トラップ」に注意を呼びかけている。鏡に映った自分の姿は、対面する他者の視覚像と等しい。つまり、鏡を見たときに「相手から見てyの字」になっていれば正解なのだが、自分の手元感覚と鏡像が頭の中で衝突し、パニックを起こす初心者が後を絶たないのだ。
和装産業の現場からは、「自撮り写真を投稿する前に、必ず手持ちのカメラアプリで左右反転補正が作動していないか確かめてほしい」という切実な声が漏れる。伝統の意図せぬ歪曲を防ぐためにも、視覚ツールへの過信は禁物だ。