過激な報道が先行する中で、ネット上では極端な誤解やデマも散見されます。正しい理解のために、押さえておくべきポイントを整理します。
第一に、「医療用フェンタニル」と「不法密造フェンタニル」の混同です。医療現場で用いられる経皮吸収テープ剤(フェンタニルパッチ)や注射液、舌下錠は、厳格な品質管理のもとでマイクログラム(1ミリグラムの1000分の1)単位で精密に制御されています。適切に使用される限り、激しい痛みに苦しむ終末期がん患者の生活の質(QOL)を保つための不可欠な医療資源であり、正当な治療を拒絶することは患者に過度な苦痛を強いることになります。
第二に、「皮膚に微量の粉末が触れただけで即死する」「空気中の粉末を吸った警官がバタバタと倒れた」という過剰なパニック言説です。米医学毒性学会(ACMT)などの専門機関は、乾燥した粉末が日常的な接触で皮膚から瞬時に致死量吸収されることは医学的に考えにくく、現場での失神事例の多くは極度のパニック発作や過呼吸が引き金になっていると指摘しています。もちろん粘膜への付着や偶発的な吸入は極めて危険ですが、科学的事実に基づかない恐怖の拡散は、倒れている人への迅速な救命活動を躊躇させる二次被害を生んでいます。