アニメ『ドラゴンボール』シリーズにおいて、カリン様のキャラクター性を決定づけた立役者が、初代声優・永井一郎氏です。『サザエさん』の磯野波平役をはじめ、数多くの名作で日本のアニメ史を牽引した名優が吹き込んだ声は、仙人としての枯れた渋みの中に、深い慈愛と茶目っ気を同居させた唯一無二の響きを持っていました。
アニメ関係者の証言や当時の音響現場の記録によると、永井氏は「猫の姿をしているが、決して子供騙しの擬人化にならないよう、数百年を生きた古武道の長老としての風格を意識した」と語っています。その語り口のテンポや間(ま)の取り方は、悟空がどれほど焦燥に駆られていても、塔の上に一歩足を踏み入れれば心が鎮まるような絶対的な安心感を醸し出していました。
永井氏が2014年に急逝された後、そのスピリットは実力派声優たちへと大切に継承されています。『ドラゴンボールZ』のブウ編代役を務めた龍田直樹氏、劇場版『神と神』などで担当した佐藤正治氏、そして『ドラゴンボール超』で息を吹き込んだ魚建氏に至るまで、歴代の演者たちは永井氏が築き上げた「温厚で飄々としつつも底知れない威厳」を忠実に守り続けています。声優陣の敬意あるバトンタッチによって、カリン様のキャラクター像は半世紀近くにわたり色褪せることなく維持されています。